kunio_ohgawara.jpg

 東京・六本木の森アーツセンターで開催中の『機動戦士ガンダム展 THE ART OF GUNDAM』と時期(9月27日まで)を同じくして、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』のメカニック・デザインで知られる人気デザイナーの全貌を紹介する『メカニックデザイナー 大河原邦男展』(写真)が、東京・上野の上野の森美術館で開催された。タツノコプロ制作のテレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(1972〜1974年)で初めてメカデザインを手掛けた大河原邦男は、1947年に東京で生まれ、大学卒業後にアパレルメーカー勤務などを経てタツノコプロに入社(1973年)。以後、日本初のアニメ・メカニック専門デザイナーとして、その分野を開拓してきた。なかでも『機動戦士ガンダム』(1979〜1980年)や『装甲騎兵ボトムズ』(1983〜1984年)などの作品では、登場する人型メカのデザインが高い評価を受け、現在もアニメに留まらないロボット・デザインの第一人者として活躍を続けている。

 今回の『大河原邦男展』は2009年の『大河原邦男のメカデザイン』展 (八王子夢美術館)、2013年の『超・大河原邦男展-レジェンド・オブ・メカデザイン-』展 (兵庫県立美術館)に続く三度目の大規模企画展であり、デザイナーとしての43年間の業績を時系列に添って振り返った、決定版ともいえる展覧会となっている。

 展示内容は以下のとおりで、まず「第1章 1972-1977 メカニックデザイナーとしての黎明」と題されたコーナーで、タツノコプロ入社から退社に至る時期の業績が紹介されている。タツノコプロの美術部長だった中村光毅の元で腕を磨き、『ガッチャマン』で才能を発揮して以降のメカデザインの数々が展示され、いずれも当時使われていた青焼きコピー(ジアゾ式コピー)の図版であるところが時代を感じさせて味わい深い。

 そして次の「第二章 1978-1989 リアルロボット大フィーバー」では、子供向けの”巨大ロボットもの”と言われたアニメがリアリティを重視したSFアニメに変わった時期の作品にスポットを当て、リアルなロボット・デザインの確立に大河原邦男が果たした功績を浮き彫りにしている。嚆矢となる作品として『機動戦士ガンダム』が取り上げられているのは当然だが、展示されているデザイン画が同時開催中の『機動戦士ガンダム展』と被らないものになっているところに、主催者の気配りが感じられて心憎い。

 さらに、その延長上にある1980年代の『太陽の牙ダグラム』や『ボトムズ』のデザインも展示されている一方で、”巨大ロボットもの”の『最強ロボダイオージャ』の合体パターンや『無敵ロボトライダーG7』の発進プロセスといった、多彩なメカデザインの展開が見られることもこの時期の特長といえるだろう。そればかりかプラモデルのメカデザインや、「グリコのおまけ」のような立体物のデザインにまで大河原邦男は手を広げていくのだが、それら端正に描かれた設定図版のどの一枚にも、メカでありながら温かみが感じられる独自の個性が宿っている。

 続く「第三章 1990-2000 ヒーロー、コミック、そしてリアル」では『機動戦士ガンダムF91』、『機動戦士Vガンダム』、そして子供向けにコミカルにデフォルメされたガンダムなど1990年代の作品のメカデザインが展示され、大河原邦男が『ガンダム』シリーズにとって不可欠のクリエイターとなったことがよくわかる。当時の大河原邦男は自宅に旋盤加工機を備え、みずからのデザインを立体化した様々なものを自作していたというから驚かされるが、このコーナーにはその実物も展示されている。

 オリジナル立体物「ディノライト」のほか『ボトムズ』に登場する人型メカの頭部立体、スペース・コロニー型LEDライトなどなどだが、どれも図録(厚さ25ミリの豪華版)には写真は掲載されておらず、これらを確認するにはやはり展示会に足を運ぶしかないだろう。

 最後の「第4章 2001-2015 21世紀、永遠のスタンダードへ」では最新の業績が紹介され、『機動戦士ガンダムSEED』やリメイクされた『ヤッターマン』など21世紀に入ってからの作品のメカデザインは、若いアニメファンにとっても馴染み深いのではないだろうか。ほかにも2001年に制作中止となったテレビアニメ企画『鉄の惑星ランディフォース』のメカデザインが初公開されていたり、2016年設置予定の「ガンダム・ザクモニュメント」のデザイン画や、”乗れるロボット”の実車モデルの展示があったりと、大河原邦男がもはやアニメの領域を超え、日本の未来をデザインしているように感じられた展覧会であった。

 なお次の巡回展は11月7日(土)〜12月23日(水・祝)に、岩手県の盛岡市民文化ホールで催される。