インターネット・アーカイブ(The Internet Archive、米国)は、The Council on Library and Information Resources (CLIR) と共同で、2015年7月から2年間の契約で「ビジュアル・データ・キュレーション・フェロー」を公募中だ。

インターネット・アーカイブは、ブリュースター・ケール氏(Brewster Kahle)により「Universal Access to all Knowledge」を活動理念にして1996年に設立された非営利組織で、ウェブサイト、書籍、テレビニュース、ソフトウェア、オーディオ・ビジュアル資料など総データ約19ペタバイトのデジタル資料をオンライン・ライブラリーで公開する。また、同組織は、米国の教育映画、広告、ホーム・フィルムなどのコレクションを保有する「プレリンガー・アーカイブ(Prelinger Archives)」のデジタル化とその公開、ハーバード大学による東日本大震災のアーカイブ・プロジェクト「Digital Archive of Japan’s 2011 Disasters」への資料提供なども行っている。

公募概要によれば、「ビジュアル・データ・キュレーション・フェロー」は以下に挙げる業務への貢献が期待されている。

1)既存のフィルム・データベースの改善とアーカイブ編成、文書記録のためのワークフロー確立をサポート

2)所有するビジュアル資料の検出/アクセス/活用を強化するために、研究者や他のライブラリー、コレクションとのパートナーシップ形成

3)資料の活用事例とユーザーとの関係を強化

4)コンピューター・サイエンティスト、インターフェイス・デザイナー、アーキビストらと恊働でユーザー主導の資料編成のための次世代ツールのテストケースの開発

これらを見ると、科学者、デザイナー、アーキビスト、研究者らと恊働で、膨大なビジュアル・データを活用させるために今後ますます求められることになるであろう、新たな専門家像が浮かび上がる。ここで「キュレーション」という言葉を使用している点が興味深い。近年、とりわけメディアアート分野では、ニューメディア以降のキュレーションを再考する議論が活発である一方で、2000年半ば頃から「デジタル・キュレーション(デジタルデータの生成から再利用、長期保存まで、様々な活動を包含した概念)」が注目されている。

「デジタル・キュレーション」で扱われる対象はデジタルデータであり、その内容は身近なニュースから研究論文や公文書まで多岐にわたる。しかし、「キュレーション」の語源(ラテン語:curare、保護する、世話をする、気をつけるなどの意)が示すように、美術館や博物館等の文化施設に従事するキュレータと同様に扱う対象の保存/公開/価値評価/教育普及といった役割に大きな違いはないといえる。しかし、「デジタル・キュレーション」において、その膨大なデータ量と多様なデジタル・フォーマットを扱うために、学際的な専門知識とスキルが求められる。さらに、扱う対象に対して、データ分析を通した大局的な視点の確保とデータ抽出の両者が求められ、アーカイブ編成やキュレーション、データ保存、コンピュータ・サイエンスなどの領域で培われた知見の応用作業ともいえよう。

ここで筆者が注目することは、メディアアートにおける「デジタル・キュレーション」の可能性についてである。その理由は、メディアアートにデジタルデータを使った作品やネットアートが含まれるから、というだけではない。様々な理由で作品保存が困難なメディアアートにおいて、その多くがデジタル資料化されうる作品資料も実際の作品と同等に重要になることが予想されるためである。言うまでもなく、デジタルデータはコンピューターやインターネット上がその保存と公開の場となる。従来のキュレーションと平行して「デジタル・キュレーション」について考察することは、メディアアートを将来へ継承するもう一つの場を創造することへつながるのではないだろうか。

「インターネット・アーカイブ」がビジュアル・データ・キュレーション・フェローを公募中
http://www.clir.org/fellowships/postdoc/applicants/internetarchive2015

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【参考リンク】

Digital Curation Center (DCC)
http://www.dcc.ac.uk/

Digital Curation Resource Guide
http://digital-scholarship.org/dcrg/dcrg.htm