「メディア芸術連携促進事業 連携共同事業」とは

マンガ、アニメーション、ゲームおよびメディアアートに渡るメディア芸術分野において必要とされる連携共同事業等(新領域創出、調査研究等)について、分野・領域を横断した産・学・館(官)の連携・協力により実施することで、恒常的にメディア芸術分野の文化資源の運用・展開を図ることを目的として、平成27年度から開始される事業です。

*平成27年12月1日中間報告会が国立新美術館にて行われました。
*平成28年3月13日最終報告会が京都国際マンガミュージアムにて行われました。
*平成27年度の実施報告書はページ末のリンクよりご覧いただけます。

●「第4回マンガ翻訳コンテスト」
デジタルコミック協議会

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 本事業は海外に日本のマンガを広めていく際、外国語版出版に不可欠なすぐれた翻訳家の発掘、育成を目的とするコンテストの開催事業。応募者は課題作品となっている日本のマンガに対し、英語翻訳をつけ、その訳のクオリティが審査される。優れた翻訳者は正式に日本マンガの翻訳者としてデビューが可能となっており、本事業をマンガ翻訳者の登竜門として位置付けることを目指している。

●中間報告レポート

 日本の出版社33社、賛助会社4社からなる「デジタルコミック協議会」は日本のコミックのデジタル普及を目指す団体で、この協議会の中の「海外推進委員会」委員長・関谷博氏(集英社ライツ事業部副課長)が報告を行った。

「『マンガ翻訳コンテスト』は前回(のコンテスト)が160件ほど応募があったので、今回は200件くらいを応募数のメドと考えており、その中から大賞(受賞者として)、プロの翻訳家候補を3名選出することが目標」。デジタルコミック協議会主催のこのコンテストは「株式会社電通」が事務局を担当し、協力会社の「Tokyo Otaku Mode」がそのホームページの中にコンテストの公式サイトを設けている。協賛会社は角川文化振興財団のほか、今年はJAL(日本航空株式会社)も加わるとのこと。

 今年度の応募期間を終えて一次審査に入った現在では、110件程度の応募状況。去年より応募数が減った要因は、「対象作品が4作品から3作品に減ったというのと、(中略)なかなか翻訳に短期間で手を出し辛い作品だったのかもしれない」とのこと。

 今後は2016年1月に審査員三名による最終審査を行った後、2月24日に東京・秋葉原の「UDXシアター」においてコンテスト授賞式とシンポジウムの開催を予定している。

 また問題点としてはコンテストのプロモーションがまだまだ十分ではないとのことで、今回は海外のマンガ関連イベント「NEWYORK COMIC-CON」で英語のチラシを配布したほか、公式サイトには少年ジャンプ副編集長、ちばてつや氏、藤本由香里氏らマンガ有識者の動画メッセージもアップしている。ただ、デジタルコミック協議会に参加している各社個別の情報発信は予算などの関係もあって難しく、それらの予算の獲得などが課題となっているとのことであった。

 報告後、以下のような質疑応答が行われた。

1) シンポジウムのテーマは決まっているのか?

 A:去年は座談会形式であったけれども、話題がばらけてしまったこともあり、(今後は)実際に翻訳家デビューした人や、プロの編集者から翻訳についての話をするようにしたい。来年度以降、4回目をやって蓄積した中から用例集をまとめたり、データベースとか一種の公式サイトみたいな形で、出版社だけでなく、大学関係者とか翻訳者のみなさんがアクセスできるようものの構築も考えている。

2) 「外国人に募集開始」と書いてあるのは、外国人にアナウンスしているのか?

 A:Tokyo Otaku Mode 自体、世界で6割ぐらいのユーザーが英語圏の方で、次がインドネシアなので、サイトは英語で表記されている。

3) (受賞作品が)日本国内で講読不可というのは、著作権の問題なのか?

 A:日本も含めて全世界で見られる作品もありますが、一部の作品は英語圏だけでしか見られないのは、個々の作品とか各社(版元)の考え方の違いによるもの。

4) 応募者の国別の分布は具体的にどのようになっているのか?

 A:今回はアメリカ合衆国が40名、日本が26名(日本在住外国人も含む。応募者の半数が翻訳経験者とのこと)、カナダが7名、シンガポールが6名、イギリスが6名、フィリピンが4名、ドイツが3名、インドネシアが3名、オーストラリアが2名、あと1名はベルギー、チリ、ロシア、韓国、タイ、オランダのような様々な国から応募があった。

●最終報告会レポート

報告者 デジタルコミック協議会 関谷博氏

 デジタルコミック協議会はマンガ出版社33社が集まり日本のデジタルコミックを国内・海外に普及するための団体であり、その中で海外デジタル配信を進めるための海外推進委員会が、Tokyo Otaku Mode Inc.と株式会社電通の協力により「マンガ翻訳コンテスト」事業を実施している。

 この事業の目的は、日本のマンガを海外に展開するために不可欠な優秀な翻訳者の発掘と育成、日本マンガの海外での正規版の流通促進である。デジタルコミック協議会の主導により実施し、これまでに9人のコンテスト受賞者をマンガ翻訳家としてデビュー、育成してきた。実施体制は文化庁とデジタルコミック協議会が主催し、協賛の日本航空株式会社からはコンテスト大賞受賞者の渡航チケットを提供して頂き、角川文化振興財団からは受賞者への翻訳費用を負担して頂いた。そしてコンテストの運営は株式会社電通とTokyo Otaku Mode Inc. が行った。

 審査員は編集者でライターのデボラ青木、マンガ翻訳家のマット・アルト、マンガ翻訳家ウィリアム・フラナガンの3名。実施スケジュールは平成27年8月から11月までの募集期間にTokyo Otaku Modeの公式ウェッブサイト上で翻訳作品を募集し、プロ・アマ合わせて100件以上の応募があった。11月にはスクリーニングとして第一次審査を行い、最終作品候補を選考した。そして平成28年2月2日には審査員3名による協議の上で課題作品毎に作品優秀賞を選出し、その作品優秀賞3作品の中から「作品優秀賞・大賞」1作品を決定した。平成28年2月24日には秋葉原UDXシアターで授賞式・シンポジウムを開催した。

 今年の第4回では課題作品は『蝶のみちゆき』(作:高浜寛/リイド社)、『会社の奴には絶対知られたくない』(作:若竹アビシ/日本文芸社)、『いまどきのこども』(作:玖保キリコ/小学館)の3作品で、応募総数は106件であった。そして審査結果は『いまどきのこども』を翻訳した Monique Murphy氏が大賞を受賞し、『蝶のみちゆき』のRonald Classman氏、『会社の奴には絶対知られたくない』の Jennifer Ward氏が作品優秀賞としてそれぞれ翻訳家デビューが決定しているという。

 詳細はサイト参考 http://otakumode.com/sp/mtb_fourth

 授賞式は2月24日(水)に秋葉原UDXにて開催し、授賞式には大賞のMonique Murphyさんに来日して頂いた。続いてシンポジウムでは「海外へのマンガ配信と翻訳の現状」と題しCrunchroll Inc.のロバート・ニューマン氏、株式会社WOWMAXの海部正樹氏、スクウェア・エニックスの清水正明氏に講演して頂き、活発な議論・質問があり満足度の高いシンポジウムとなったようだ。

 総括として目的の「優れた翻訳家の発掘、育成」の端緒を成すことができた。今後は受賞者が対象作品の版元とともに翻訳を行い、海外においての翻訳版の配信を行うべく、また受賞者がマンガ翻訳家として成長、成功するよう、デジタルコミック協議会で引き続きサポートを行う。課題としては海外への可能性を持ちながら翻訳出版されていない優秀な作品は、「翻訳コンテスト」だけでは限界がある。今後は「「データベース」を整備して海外出版・配信のノウハウのない多くの出版社にも、海外の出版社や配信プラットフォームと翻訳者とを繋ぐようなシステムを構築し、「翻訳コンテスト」と「データベース」とを両輪として実施していきたい」、ということだった。

講評・質疑応答

企画委員より

  • 「海外への翻訳はストーリーマンガの方が翻訳は優しい、ギャグや4コマの方が難しい。またマンガの中だけの言いまわしは、日本にもあるし、英語にもある。そして描き文字の部分をどうするか、翻訳過程そのものが文化を共有することなので推進して頂きたい」
  • 「報告書にあった”翻訳はマーケティングである”につきる。海外のファンを開拓するため次年度にも期待する。そして応募する人のスキルアップのためにも、選定するポイントや講評、よくある間違い、難しいポイントをHPに例示して通年で読めるようにしてファン層を広げることに繋がるようにしてはどうか」

【実施報告書PDF】

報告書表紙画像

報告書PDFダウンロード(3.5MB)

本報告は、文化庁の委託業務として、メディア芸術コンソーシアムJVが実施した平成27年度「メディア芸術連携促進事業」の成果をとりまとめたものです。報告書の内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます。